生成AIによりデータドリブン経営を加速せよ
データ ✕ AIの重要性が叫ばれている昨今、「データを通じて顧客のニーズを理解し、提供価値を高めることの重要性」にもはや異論はないだろう。
しかし、その道程は単純ではない。まずは、ポストコロナ時代に日本企業を取り巻くデータ利活用の背景・課題から整理しておこう。
パンデミックを経て高まるデータ利活用の必要性
パンデミックを経て企業を取り巻く環境が変化し、デジタル接点でデータを活用して提供価値を上げていきたいのに、データはますます手に入りにくくなるというジレンマが発生している。
変化①:顧客接点のデジタル化
変化②:プライバシーのディスラプション
- 2022年の個人情報保護法改正に伴い、顧客データの厳密な管理、同意が必要に
これは、データを通じた顧客ニーズ理解と提供価値向上により、顧客から信頼される企業が更なるデータを手に入れ、次の勝者となるということを意味する。
逆に言えば、データ利活用の取り組みが限定的な日本企業は、顧客に信頼されない→データが手に入らない→データを活用できない→価値を提供できない→顧客に信頼されない... という負のスパイラルから抜け出せなくなる可能性が高い。
部署横断的にデータ利活用に取り組めている企業は少ない
では、日本企業はどの程度データ利活用に取り組めているのだろうか。
足元の状況を見ると、日本企業に於いてもデータ利活用は一定進んでいるが、その多くは部門ごとの個別の取り組みに留まることがわかる。
日本企業に於けるデータ利活用の状況*2
データ利活用に向けて残された「人」の課題
何故、全社的なデータ利活用が進まないのか?
多くの日本企業では、データ分析環境の整備は一定進んだものの、組織・人材面での壁が全社的なデータ活用を妨げている。
- IT人材とスキルの不足
- 組織の連携不足
- データの所在が不明
- 活用以前のリテラシーの低さ
日本企業が直面するデータマネジメントの課題*3
組織横断的なデータ利活用成功の秘訣:アジャイル+信頼
では、組織・人材の壁を乗り越え、組織横断的なデータ利活用に成功したプレイヤーはどのような道筋を辿ってきたのだろうか?
以下に日テレとホンダの事例を紹介する。両社は「アジャイル」に小さな成功体験を積み重ね、他部門の課題を地道に解決することで「信頼」を構築し、組織の壁を打破してきたことがわかる。
生成AIで人材を補完し、全社的にデータ利活用文化を醸成
データ利活用を全社的に広げていくためには、他部署の課題を地道に解決し信頼を構築していくのが王道ということだが、(前述したように)それを推進する人材が不足しており、結局ジレンマに陥ってしまう。
そこで、生成AIを活用することを提案する(下図参照)。
このAIは社内コンサルタントとして振る舞い、①分析結果を提示して文書作成業務を効率化したり、②プロンプトによりビジネス部門が独自に分析を実施したりすることができる。
このようにCDP(顧客データ基盤)と生成AIを組み合わせることで、分析担当者の工数を削減しつつ、ユーザにデータの価値を感じてもらう仕組みを作ることで、組織全体でデータ活用のニーズを喚起できる。
*1:保科学世 (アクセンチュア株式会社) 『データドリブン経営改革』
*2:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 『企業IT動向調査報告書』 (2022年, 2023年度) より筆者が作成
*3:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 『企業IT動向調査報告書』 (2022年, 2023年度) より筆者が作成